出来ない。まれびと[#「まれびと」に傍線]及び其眷属の物語、地霊の来歴などが、時を経て段々長い形の物になつて来た。地霊が恣に発言する時期が来ると、地霊自身の名のつた種姓明しの文章が、限りなく殖えて来る。さうして、地霊が、神社の神として祀られる前期王朝になると、地霊の託宣自身が、まれびと[#「まれびと」に傍線]又は天つ神の呪言・種姓明しとおなじ威力を持つものとせられる様になつた様である。かうなると、種姓明しの託宣が殖えて来る。祀られない神が新しく祀りを享けようとし、祟り神が「何処の神が何故に祟つたか」など説明する場合が多くなつたからである。
一方、初めに戻つて、歴史観念が出て来ると、邑・家・土地の歴史を知りたく思ふ邑人の意思が神人に反影して、神話にさうした方面が多くなつて来る。邑の来歴は、邑君の家の歴史と一つであり、土地についた説明も、其に関聯して託宣に表れて来る。而も家の歴史の中、又一つの大切の部分が派生して来る。其は、邑君の家の系統を伝へる口頭の系図である。
神託宣から発した歴史には系図も含まれて共に伝承せられたのが、後には此だけを分離して口誦する様にもなつた。
その口頭歴史伝承は、
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