ないから、第一次的第二次的、いづれにせよ、此団体組織の備つて居た土地に就いてばかり論じる。が、自然国中全体に此組織が行はれて居たものと言つた表し方をとることがあるかも知れない。けれどもどこまでも、此を持たなかつた村国は問題の外になつて居るものと見てほしい。
語部の事を説く前に、叙事詩の発生を言ふ必要がある。
「よごと」の章に述べた様に、よごと[#「よごと」に傍線]の中に、祝福風の発想と、圧服式の表現とがある。とこよ[#「とこよ」に傍線]のまれびと[#「まれびと」に傍線]が名のり[#「名のり」に傍線]によつて、土地の精霊の名のり[#「名のり」に傍線]を促す形の一つ前の姿は、まれびと[#「まれびと」に傍線]自身の種姓《スジヤウ》を名のつて地霊を脅かす方法と、地霊の種姓を、こちらから暴露する為方とがあつた。種姓|明《アカ》しが呪言としての威力発揮の一つの手段であつたのが、段々分化して種姓明しの口頭文章の内容が、歴史観念を邑々の人の心に栽ゑつける。而も呪言としての利用尠くなつた文章にも、やはり勿論神言の威力は存在したので、叙事詩が純粋の歴史伝承ととり扱はれる様になつた時代はあつたか、どうか断言
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