生の用語)のある事を発見せられた旅行の土産話を、先生の口づから聴かして頂いた時からである。この先生から得た学問上の得分は沢山あるが、語部に対する暗示は、この章のはじめに記して、深い御礼心を表したい。それと共に、此章が、その下された暗示から成長して、ともかくも古代生活の大きな一方面に探りだけでも入れる事の出来た業蹟を見て頂いて、行供養《ギヤウクヤウ》の微意をお目にかけようと思ふのである。
語部の伝承が、叙事詩は勿論曲節もないとする人は今もある。人によると語部の職掌が、説話伝承でなかつたとまで言ふ向きもあつた。其等の人の考へに対しては、此章自身が適当な返事となる事と信じて、一々は論じない。
生活条件を同じくした村も異にした村もあつて、其が引き続いて前期王朝に及んだとすると、勿論習俗の同化したのもあり、頑固に他の村国の影響を拒んだ村国もあつたであらう。而も、ある部分づゝは次第に風化せられたものと見てよい。併し、語部なる職業団体を初めから――常識的に言うて――持つて居た村国と其をまねた村国と、さうした部曲を置かずにとほした地方とがあつたと考へるが正しい。こゝには、語部のない村国は考へる事が出来
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