をよ[#「をよ」に傍線]・をや[#「をや」に傍線]など訳して切り、次の語句へすぐさま続けぬ様にせねばならぬ。
「……此野をよ」「……此野なるものをや」など釈いて、現代の語感のためには「をよ。それを……」と言ふ風にでも訳すればよからう。さうすると「懐しい野であることよ。それに、此野を焼かうと言ふのか。……焼いてくれるな」と懐旧の情を起してゐるのであらう。
古草に新草まじり
「古草に新草まじり……」は二様にとれる。「へた[#「へた」に傍点]に焼いて、古草に新草まじつて生える様な風には焼くな」と言ふ風にとるのが、文法の正面だが、さうはとれない。
「野をばな焼きそ」と印象強く言うてゐるのを見ると、「野」と「な焼きそ」との関係は放されないのである。「野……をよ。其は、……まじり生ふべくある様にと思ふ野なるを焼くな」の義である。「な[#「な」に傍点]」の禁止感は「生ふべく焼くこと」を支配するのではない。「生ふべき為に焼くな」と「焼く」だけにかゝる制止である。
残りの部分を口訳すると「……ふる草にまじつて新草の生えるやうにはからうて、焼かずに居れ。此野の野守りよ」と言ふ事になる。
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