五月の早苗時の信仰を持つて行つたのであつた。
ながめいみ[#「ながめいみ」に傍線]は、皐月の神となる物忌みだと言うた。而も、成年戒に関係深い事を述べておいた。
万葉では、意義合理化せられてゐるが、女にあはぬ長い間の禁欲生活といふ義を含んでゐた証拠を一つあげる。
世に経るながめ[#「ながめ」に傍線]
古事記にある「長目を経しめたまふ」と言ふ語が、其である。主上の、快からぬ貢女に施された冷遇法であつた。
媾を断つて久しい事が、ながめ[#「ながめ」に傍線]を言ふと説くか、欲情生活の空虚から来る、つれ/″\な憂鬱《ナガメ》を思ひ知らしめた事で、ながめ[#「ながめ」に傍線]は、
[#ここから2字下げ]
花の色は 移りにけりな。いたづらに 我が身世に経る ながめ[#「ながめ」に傍線]せしまに(古今巻二)
起きもせず 寝もせで 夜を明しては、春の物とて ながめ[#「ながめ」に傍線]暮しつ(古今巻十三)
[#ここで字下げ終わり]
などのながめ[#「ながめ」に傍線]だと言ふかすれば、今の処正しい説と見られるだらう。平安朝のながめ[#「ながめ」に傍線]は、禁欲或は、人に会ふを得ぬ不満から起る
前へ
次へ
全30ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング