ヨ》の遊行に出させたらしいのである。
女の授戒も、四月上旬から中旬に亘つて――平安朝からも見えた――村々でせられた。山ごもりに、成女戒を受け、同時に早処女《サヲトメ》に出る資格を得た。
男のも、恐らく此前後に行はれ、授戒の済んだ者は、やはり山ごもりを長く続けさせられたものと思ふ。此が、貌《かほ》つきを替へて、大峰山上でする御嶽精進にもなつた。此は、平安中期にも既に見えた事だ。とりわけ、新達《シンダチ》など俗に謂ふ初登山の若者は、先達から苦しめられた。
石を堆《つ》んで人を埋めた石こつみ[#「石こつみ」に傍線]の話、謡曲に残る谷行の作法などは、成年戒の苦しみの物語化したものである。天狗が胯《また》を裂くといふ信仰も、此に関係がある様だ。さうして、山を出ると、精進落しと言ふが、大峰入りの数を重ねた年長者が、新達《シンダチ》を大和・紀州の平原の田舎色町に連れ出して、女に会う道を知らせる。こんなしきたり[#「しきたり」に傍線]は、伊勢参宮の形で行ふ地方もある。国々には、此意味の初参詣が、霊山・聖地に行はれて居もし、居た事は、近頃も多い。
端午が、漢人伝来の節の斎みであるのに、恰《あたか》も当る
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