。どう言ふ風にするか想像出来ぬが、しるし[#「しるし」に傍線]なる物を堅く結んであつたと見える。其を解きほぐしてやるのは長老の権力で、さなぶり[#「さなぶり」に傍線]後の一夜だけであつたらう。次の期の神事の物忌みまでは、褌《ハカマ》をはく事を許したものと見てよからう。
其故、若い衆入りに、ふんどし[#「ふんどし」に傍線]を緊めて、初めて若衆宿に挨拶に行くもあり、氏神へ詣るのもあるのだ。神人としての物忌み初めのしきたり[#「しきたり」に傍線]であつたのだ。此が段々受戒者の誇りとなつて、常にも自ら緊めて、自由に解きもし、ふもだし[#「ふもだし」に傍線]としての厳しい束縛を段々緩く、自由にして行つたのだ。
かうしたふもだし[#「ふもだし」に傍線]は、若い衆の常用品となつて来た。新受戒者は、殊に厳重な束縛から、始めて一夜《ヒトヨ》づまの居る、女の家に入る。此記憶が、長く印象を、当然神人の一員となるべき氏子の男、其しるしに加へられる神秘の制約、其処の折り曲げられるしきたり[#「しきたり」に傍線]、此条々が、かうした氏子の特徴を考へさせた、村々の長い信仰生活が思はれるのである。
たぶさき[#「たぶ
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