斎《ナガメイ》み」など言ふ語は、雨季の五月の居籠りを言ふので、雨の為に出られずに、こもつてゐる義ではない。
八重山島のある村では、尻の亀の尾の辺に、特徴を与へるのが、成年戒を授けたしるし[#「しるし」に傍線]とする。兄若い衆に当る者が二人で、受戒者の臀を下に手足を持つて吊りあげて、ある聖なる石の上に、尾※[#「骨+低のつくり」、第3水準1−94−21]骨を打ちつける。かうした風もあると思へば、割礼を施す以外に、神秘の条件に叶うたらしく感ぜられる。
神としての資格を完全に得る為、物斎《モノイ》みを家に居てする間の禁欲生活を遂げさせる為、しるし[#「しるし」に傍線]を曲げて縛つて置きなどした信仰伝承があつたかと思ふ。其が諺化し、伝承化して氏子の特徴の言ひ習しを生んだらしい。古代人は、はかま[#「はかま」に傍線]は穿いてゐたが、ふもだし[#「ふもだし」に傍線]は常用しなかつたらしい。ふもだし[#「ふもだし」に傍線]の、生き物を繋ぐ用途から、男精を縛る布の名にもしたのであらう。
我々の間に段々行はれなくなつて来たふんどし[#「ふんどし」に傍線]は、実は物忌みの間、貞操帯の様な役をした物であらう
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