からである。殊に少青年の行動は戒めねばならぬ様であつた。
端午の節の斎戒は、男が守らねばならなかつた為、男の節供として、人形《ヒトガタ》を据ゑて穢邪を移し、又ゆきあひまつり[#「ゆきあひまつり」に傍線](交叉期の祭り)の考へから出た邪鬼――夜行神の恐れが転じて――の来襲を防ぐ備へをする日になつた。併し、五月幟の類は、一つは田植ゑに来訪する神を迎へる招《ヲ》ぎ代《シロ》なる青山(標の山の類)の変化でもあり、又神人たるべき若者の、神意によつて、指された住む家の目あてになるものらしい。つまりは、斎居《イモヰ》の宿のしるし[#「しるし」に傍線]から拡つたのである。
我が国では、ある時代から、多く四五月の間を、成年戒・成女戒を村の青年処女に授ける時期とする様になつたらしい。成年戒を授かつた後の男子は、忌み日として外に集つて居籠るのではなく、神人の一人として、群行神の一人に扮して、女の家に訪れて行く資格を得るのである。
男になつたしるし[#「しるし」に傍線]
古代には、成年戒を授かるのは、初春よりも、此五月の夜に多かつたらしい。中部・西部諸国に亘つてある或神の氏子の男のしるしの曲つて
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