、「御」を敬語と考へ「津《ツ》」を独立させて了うて、支那の津《シン》の意味に、文字の上から聯想して来たのである。昔の人も、合理的に、よい加減に考へてゐた。
合理とは、らしよなりずむ[#「らしよなりずむ」に傍線]の訳であるが、合理と言ふことはいけないことで、無理に理くつに合せ、都合のよい理くつをつけ、無理に理くつに叶はせると言ふことで、此は、合理の意味の用ゐ方が違うてゐる。尤近頃では、好ましい用語例を持つて来た様である。ともかく、みつ[#「みつ」に傍線]も、其合理的な考へ方によつて、み[#「み」に傍点]は敬語、つ[#「つ」に傍点]は船どまり場だ、と言うてゐるが、其は、支那の文字の「津《シン》」の説明にはなつても、日本のつ[#「つ」に傍点]の説明にはならない。
摂津国をつ[#「つ」に傍線]の国と言うたのは、禊ぎの国として、最大切な国であつた為である。
仁徳天皇の皇后いはのひめ[#「いはのひめ」に傍線]の命《ミコト》は、嫉妬深い方であるが、或時|御綱柏《ミツナガシハ》を採りに、紀の国に行かれた間に、天皇がやたのわきいらつめ[#「やたのわきいらつめ」に傍線]を宮殿に入れられた、とお聴きになり、
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