非常に恨み怒られて、船に積んでゐた御綱柏を、悉く海に投げ込まれたので、其処を御津の崎と言ふ、といふ話があるが、この御綱柏と言ふのは、禊ぎに使ふ柏、と言ふことである。いはのひめ[#「いはのひめ」に傍線]は、他氏出の后である。この他氏出の后といふのは、天皇に禊ぎをすゝめる方である。
九 伝襲的学説
この様に、段々探ると、今までの語原論・伝襲的学説は、次第に破られてゆく。国学の四大人は、其時代のあらゆる知識を利用して、研究されたのである。我々の時代には、又、我々の時代としての知識によつて、研究して行かなければならない。先輩の研究は、有難いものではあるが、我々は其を越えて、伝襲的学説を、改めて行かなければならない。定論と言ふものは、さうあるものではない。正確か、不正確かの問題である。
一〇 神典解釈上の古今
神典の解釈も、古来種々と行はれてゐるが、信仰といふものは、現実に推移して行く。故に神典の解釈に当つては、古典として固定したものを、理会して行くのであるから、理会の為方があるのである。其方法及び助力が、時代によつて異つてゐる。古くから、江戸時代に至る迄は、日本紀の
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