考へて来た。かうして、実権は次第に、低い位の者の手に下つて行き、武家時代には所謂、下剋上――易経の語を借りて――と言ふ事が、現れて来る。此は、上位の人と、下の者とが、同格になる時があつたのである。
天皇は、天つ神とは、別なお方であるが、同格になられる事があるので、我々の信仰では、天皇と、天つ神とを分つことが、出来なくなつてゐる。ところが、天皇と神との間に、仲だちといふものを考へて来た。信仰上の儀礼で、介添への女がゐる。天皇は、瞬間々々に神となられるが、其より更に、神の近くに生活し、直接に、神の意志を聴くものである。
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 ┌a'[#「a'」は縦中横]
a┤↑
 └b
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aは天つ神。a'[#「a'」は縦中横]は其御言詔持ちなる地上の神。bは介添への女性。a'[#「a'」は縦中横]に仕へねばならない尊貴族、最高位にいらつしやる方に当るbと言ふものは、信仰的にはaの妻であるが、現実的には、a'[#「a'」は縦中横]の妻の形をとる。祭りの時も、此形式をとるものである。
宮廷で、神を祭るのは天皇で、神来臨は、信仰の上のことであつて、神主が即、神であつた。今の神
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