代にあつては、神であり、神の続きと見てゐる。
此処で、天子の意味を考へて見たい。
天皇は、天つ神の御言を、此土地にもつて来られたお方である。昔は、言葉によつて、物事が変化する、と言ふ言霊《コトダマ》の信仰をもつてゐた。言霊は単語、又は一音にあるやうに、古く神道家は解いてゐたが、文章或は、その固定した句に於て、はじめてある事実である。文章に、霊妙不可思議な力がある、と言ふ意味からして、其が作用すると考へ、更に、神の言葉に力があるとし、今度は語の中に威力が内在してゐる、と考へた。其を言霊と言ひ、其威力の発揚することを、言霊のさきはふ[#「さきはふ」に傍線](又は、さちはふ[#「さちはふ」に傍線])と言うた。
天皇は、天上の神の御言詔《ミコト》を伝達して、其土地の人、及び、魂に命令せられる。其間は、天神と同じになられるのである。
上使が「上意なれば座に直る」などゝ言ふのも、此と同じことである。天皇には、神聖な瞬間が続いてゐるのだから、神であるが、元は、御言詔持《ミコトモ》ちであらせられた。天神の御言詔どほり、其土地に実現なさるのである。
其が後には、天皇の為に、更に御言詔伝達《ミコトモチ》を
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