をお建てになつて、天御柱を廻つて、夫婦《メヲト》の契りをなさつたと言ふ。此は不思議なことで、新しく結婚して、夫婦になると、家を建てる。此を妻屋《ツマヤ》(又、嬬)と言ふ。万葉にもある。妻屋を建てなければ、正式に結婚した事にはならない。結婚する為に、家を建てるのは、いざなぎ[#「いざなぎ」に傍線]・いざなみ[#「いざなみ」に傍線]二神の故事によつて、柱を廻るのに、傚うたのである。特に、新夫妻の別居を造る、と言ふ意味ではない。此が逆に新屋を建てると、新しい夫婦を造つて、住はせなくては、家を建てた、確実な証拠にはならない、と言ふ考へを導いて来る。夫婦になる為に家を建て、家を建てる為には、夫婦を造らなければならない、と言ふ変な論理である。日本では、逆推理・比論法を平気でやつてゐたのである。をかしいながら、理窟が立つてゐる。
いざなぎ[#「いざなぎ」に傍線]・いざなみ[#「いざなみ」に傍線]二神が、神々をお産みになつた後、大八島をお産みになつた、と言ふことは、信仰だからいゝのだ、とだけでは済まされないので、説明するのに、ちよつと困る話である。肉体を持つた神が、何故に土地を産むのか。其が神聖なのだ
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