化せられて来て、宮廷の神道では、高天原と考へた事は、既に前に述べた。
昔は、海境《ウナサカ》――水平線――で、海はどかつ[#「どかつ」に傍点]と落ち込んでゐて、其処を越すと、常世国があると思うてゐた。海境は、行けば行くほど遠のくので、とても行きゝれない。たゞ不思議なものゝみが行く、と見てゐた。又この海境で、天と海と一つになつてゐるので、空と海とは同じだ、と思うてゐた。水と天との境が訣らなくなつて、海の彼方と言ふ考へを、空に移して来た。
此は宮廷の考へであるが、ずつと後の奈良朝の頃まで、海の彼方又は海の底と考へてゐた。其が次第に、高天原と一つになり、純化せられて、其処に、総括的な地位にある神がゐる、と信じた。常世国には、国・邑の魂が集中してゐるから、国・邑の関係が、密接である。自然、血族的に考へて、親の魂・祖先の魂の集つてゐる所と考へて来て、人間との気持ちに、親しさが出て来る。同時に、尊敬の心が生じて来る。此が魂から、神の考への出て来る基となつてゐる。
六 数種の例 一
記・紀に、おほくにぬし[#「おほくにぬし」に傍線]の命が、海岸に立つて、葦原の中つ国の経営法を考へてゐる
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