だ、と考へられるものがある。此魂の一部分は、聖なる資格ある人に著くものである。其の他の部分は、其人だけのものである。国・邑の魂の数は、定つてゐる。此には、証拠がある。其魂が、出たり這入つたりしてゐる。一人の人が死ぬと、其魂は、外のむくろ[#「むくろ」に傍線]に著いて、生きて来る、と考へた。其処から魂が個人持ちのものだ、と言ふ考へが、導き出されて来た。其で考へて来たのが、魂の集る処といふことである。此が、神典で一番大切な、神《カム》づまる[#「づまる」に傍線]である。
結局、玉留産霊《タマツメムスビ》[#(ノ)]神《カミ》の語原は、神づまる[#「づまる」に傍線]とおなじであると思ふ。つまる[#「つまる」に傍線]は、集中する意味だとおもふ。日本神道の純化して来た時代には、高天原が神づまる[#「づまる」に傍線]場所として、斥されてゐるが、もとは、日本の国土の外、遠く海の彼方の国が考へられてゐた。其処に集つた魂が、時を定めてやつて来て、人に著くと、人が一人殖えると考へた。
此海の彼方の国が常世国《トコヨノクニ》で、浄土・ぱらだいす[#「ぱらだいす」に傍線]或は、神の国と考へられてゐる。次第に純
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