血族関係が認められ、神主は神の子だ、といふ統一原理が出て来た。此点について、今までの研究は、非常に偏見に支配されてゐた。古代の神道を正しく見極め、新しい神道の道を進む為には、偏見があつてはならない。
以上のことから、にぎはやひ[#「にぎはやひ」に傍線]の命と、其を祭る物部氏との間に、血族関係があるものと信ぜられて来た。由来物部氏は、魂を扱ふ団体で、主に戦争に当つて、魂を抑へる役をしてゐた。此点でも、物部氏をもつて、武器を扱ふ団体だ、としてゐた従来の考へ方は、改められねばならない。即、物部氏は、天皇霊の外に、大和国の魂、其他の国々の魂を扱ふ大きな家であつた。
天皇即位の時には、物部氏が魂を著け奉るだけでなく、新しく服従した種族の代表者も、出て来て其を行うた。奈良朝前までは、群臣中から、大臣・大連の人々が出て、天皇の前で、其詞を奏した。後、朝賀式が重視せられるに至つて、寿詞を奏するやうになつたのである。
今から考へると、寿詞の奏上は、新しく服従した国の外は、御一代に一度すればよい訣だが、不安に感じたのであらう、毎年其を繰り返した。新嘗を、毎年繰り返すのと同じ信仰で、魂は毎年、蘇生するものと
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