の大和入りより前に、既に降つてゐて、天孫は御一人である筈なのに、神武天皇の大和入りの時に、ひよつくり出て来て、弓矢を証拠に、天から降つたことを主張してゐる。
此話を正しく解釈出来ないで、政治的の意味があるやうに解いてゐるが、実はにぎはやひ[#「にぎはやひ」に傍線]の命は、大和の魂で、神にまで昇つて来たのである。この命を擁立してゐたのがながすねひこ[#「ながすねひこ」に傍線]であつた。にぎはやひ[#「にぎはやひ」に傍線]の命が離れると、長髄彦は、直ぐに亡びて了うた。大和の国の君主のもつべき魂を、失うたからである。其魂を祀るのが、物部氏であつた。
此処で、日本神道の組織が変つて来て、神と神主との間に、血族関係を認める様になつた事を述べよう。
出雲の国造家では、もと、神と神主との間に、血族関係を認めなかつた。おほくにぬし[#「おほくにぬし」に傍線]の命の帰順後、天日隅宮に隠れて、あめのほひ[#「あめのほひ」に傍線]の命をして、祭りの事を代り司らしめた。後、おほくにぬし[#「おほくにぬし」に傍線]の命を祭ることになつて、神を祭る神主は、神の子であると言ふやうに、信仰が変化して、神と神主の家との
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