る。
三月の雛祭り・端午の節供・七夕・盂蘭盆・八朔……などを中心に、私どものやすらひ[#「やすらひ」に傍線]を感じるしきたり[#「しきたり」に傍線]が毎年くり返へされる。江戸の学者が、一も二もなく外来風習ときめたものゝ中にも、多くは、固有の種がまじつてゐる。私は、今門松の事を多く言うた縁から、元旦大晦日に亘るしきたり[#「しきたり」に傍線]の最初の俤を考へて、古代研究の発足地をつくる。
二 ふる年の夢・新年の夢
海のあなたの寂《シヅ》かな国の消息を常に聞き得た祖先の生活から、私の古代研究の話は、語りはじめるであらう。
其は、暦の語原たる「日|数《ヨ》み」の術を弁へた人によつて、月日の運り・気節の替り目が考へられ、生産のすべての方針が立てられた昔から説き起す。暦法が行はれても、やはり前々の印象から、新暦に対立して、日よみ[#「日よみ」に傍線]の術が行はれて居り、昔、日よみ[#「日よみ」に傍線]を以て民に臨んだ人の末が、国々に君となり、旧来の伝承は、其部下の一つの職業団体の為事として、受け継がれてゐるやうになつてゐた。
大倭の国家が意識せられた頃には、もう此状態に進んでゐた。
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