古代生活の研究
常世の国
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)為来《シキタ》り

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)東京|様《ヤウ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)謂はゞむだ[#「むだ」に傍点]とも思はれる

 [#(…)]:訓点送り仮名
 (例)藤原[#(ノ)]宮の

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
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     一 生活の古典

明治中葉の「開化」の生活が後ずさりをして、今のあり様に落ちついたのには、訣がある。古典の魅力が、私どもの思想を単純化し、よなげて清新にすると同様、私どもの生活は、功利の目的のついて廻らぬ、謂はゞむだ[#「むだ」に傍点]とも思はれる様式の、由来不明なる「為来《シキタ》り」によつて、純粋にせられる事が多い。其多くは、家庭生活を優雅にし、しなやかな力を与へる。門松を樹《タ》てた後の心持ちのやすらひ[#「やすらひ」に傍線]を考へて見ればよい。日の丸の国旗を軒に出した時とは、心の底の歓び――下笑《シタヱ》ましさとでも言ふか――の
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