は絶対・恒常或は不変の意である。「よ」の意義は、幾度かの変化を経て、悉く其過程を含んで来た為に「とこよ」の内容が、随つて極めて複雑なものとなつたのである。「よ」と言ふ語の古い意義は、米或は穀物を斥《サ》したものである。後には、米の稔りを表す様になつた。「とし」と言ふ語が、米穀物の義から出て、年[#「年」に傍線]を表すことになつたと見る方が正しいと同じく、此と同義語の「よ」が、齢《ヨ》・世《ヨ》など言ふ義を分化したものと見られる。更に万葉以後或は「性欲」「性関係」と言ふ義を持つたものがある。此は別系統の語かも知れぬが、常世の恋愛・性欲方面の浄土なる考へに脈絡がある様だからあげておく。
とこよ[#「とこよ」に傍線]を齢の長い義に用ゐた例は沢山にある。「とこよ」と言ふ語は、古くは長寿者を直に言ふ事になつてゐる。だが、長寿《トコヨ》の国の義から出たと説くのは逆である。「とこよ」の義には、まだ前の形があるのである。「常世の国に住みけらし」と万葉人が老いの見えぬ女の美しさを讃へたのは、長寿の国の考への外に「恋愛の国に居たから」と言ふ考へ方も含まれてゐる様である。
とこよ[#「とこよ」に傍線]の第一
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