難ずるのに対して、村君も手のつけ様がなかつた理由が知れる。其が尚他の要素を含んで、あくたいの懸け合ひが生れて来たのであらう。
此三通りの人と神との推移の程度を示す儀式が、石垣一島に備つてゐるのである。此神も人も皆、村の青年の択ばれた者が、厳重な秘密の下に、扮装して出るのである。先島の祖先神は、琉球本島から見れば極めて人間らしいあり様を保つて居る。にいる人[#「にいる人」に傍線]と言ふ名は、神の中に人間の要素を多く認めてゐるからなのである。而も、島人の中には、にいる[#「にいる」に傍線]を以て奈落の首将と考へて居る人もある程に、畏怖せられる神である。其は、地下の死後の世界の者で、二体と考へてゐるのは、大人前・祖母の対立と同じ意味であらう。さすれば、死の国土に渡つて後、さうした姿になつたと考へたか、元々さうした者の子孫として居たのか識らぬが、同根の語のにらいかない[#「にらいかない」に傍線]の説明には役立つ。
にらい[#「にらい」に傍線]に対するかない[#「かない」に傍線]は対句として出来た語で、にらい[#「にらい」に傍線]が知れゝば、大体は釈ける。にらいかない[#「にらいかない」に傍線]
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