号の図(fig18413_01.png)入る]のしるしが書いてある。更に此が意匠化して、向ひ鍵の紋になり、獏の字も縁起のよい字か、紋所と変つて居る。其からは段々七宝の類を積み込み、新しいところで、七福神を書きこんでゐる。[#「又」に似た記号の図(fig18413_01.png)入る]のしるしは、疑ひもなく呪符[#「X」に似た記号の図(fig18413_02.png)入る]の転化したものであり、此画まで来る間に年月のたつて居る事を見せて居る。獏は、凶夢を喰はせる為であるから、「夢|違《チガ》へ」又は「夢|払《ハラ》へ」の符と考へられて居たに違ひない。一代男を見ても、「夢違ひ獏の符《フダ》」と宝船とが別物として書かれて居る。畢竟除夜又は節分の夜、去年中の悪夢の大掃除をして流す船で、室町の頃には、節分御船など言はれたものが、いつか宝船に変つたのであつた。船にすつかり乗せて了うた後、心安らかに元旦又は立春の朝の夢を見たものであつた。
かう言ふ風に、殆ど一紙の隔てもない処から、初夢を守る為の物と言ふ考へも出て来た。逐ひやらふべき船が、かうして宝の入り舟として迎へられる事になつた訣だ。が、宝船元を
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