れるのであります。つまり、全然男を知らない処女と、過去に男を持つたけれども、現在は処女の生活をして居るものと、それからもう一つは、ある時期だけ処女の生活を保つて居るものと、此三種類であります。

     二

一体、神に仕へる女といふのは、皆「神の嫁」になります。「神の嫁」といふ形で、神に会うて、神のお告げを聴き出すのであります。だから神の妻になる資格がなければならない。即、処女でなければならない。人妻であつてはならない。そこで第三類の処女と言ふものが出来てくる。人妻であつても、ある時期だけ処女の生活をする。さういふ処女の生活が、吾々の祖先の頭には、深く這入つて居たのであります。
譬へば、景行天皇或は雄略天皇などいふお方の時には、かういふ事が多かつた。――これは景行天皇・雄略天皇などいふ方々は、非常に有力な天子であつて、非常に有力な叙事詩がたま/\沢山後世に残つたといふ事に過ぎないのでありますが、――其天子が処女に接せられた話をして見ませう。景行天皇が日本武尊のお母であられます播磨の印南《イナミ》といふ所の印南[#(ノ)]大郎女といふ御方に迫られた時に、姫は逃げ廻つた。逃げ廻つて印南
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