ります。併し、後に伝はつて、皆の感激を誘うたのは、男の競争に堪へられないで死んだ処女で、大抵は純潔な処女の生活を遂げて居ります。そこで、昔の日本の処女は、そんな風な純潔な女が多かつた様に、昔から信じられて居りますが、此は実は、或種類の処女の生活を現したゞけに過ぎないのであります。
一体、日本の処女の中で、歴史的に後世に残る処女といふものは、たつた一つしかない。其女といふのは神に仕へて居る処女だけであります。昔から叙事詩に伝へられて残つて居る処女といふものは、皆神に仕へた女だけであります。今で言へば巫女といふものであります。其巫女といふものは、男に会はないのが原則であります。併し、日本にも処女には三種類ありまして、第一の処女は私共が考へてゐるやうに、全く男を知らない女、第二の処女は夫を過去に持つた事はあるが、現在は持つて居ないで、処女の生活をして居る。つまり寡婦です。それからもう一つがあります。其は臨時の処女なのです。新約聖書を読みましても訣ります様に、家庭の母親なるまりあ[#「まりあ」に傍線]が処女の生活をすると言ふ事があります。或時期だけ夫を近寄らせないと言ふ事、其だけでも処女と言は
前へ
次へ
全22ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング