く元服をする。男の元服は、近世では普通剃刀を入れて、前髪を剃る事でありましたが、女にも元服はありました。嫁入らないでも、鉄漿をつける風もありました。昔は男でも、女でも、元服の式を二段に受ける、即二度する。近世は、子供から青年になる時一度といふ事に大抵なつて居りましたが、昔は村や町の若者仲間に入る場合と、其からもう一つ、もつと小さい時のがあつて、それが古風でした。女にも、其があります。女は普通七八つで、一度裳着といふ式をして、裳を着ける。男では其を袴着といひました。男も女も其までは、着物に隠れた腰の部分は、掩ふものが許されなかつたのです。其が裳をつけると娘の資格を認められたしるし[#「しるし」に傍線]になるのです。男になるのも、下袴を着けて、掩ふべき処を蓋ふ。其から次に、自由に異性に会ふ資格を得る成年式が来るのです。此方が世に謂ふ元服なのです。此第二回目の元服は、結婚と同じやうな……結婚の為にする式と云つても殆どさし支へないのです。
女の人が鉄漿をつけるのは、嫁入りしてからと考へて居りますけれども、此鉄漿といふものは、女になつた事を外部に現すだけのことであつたと思はれます。だから其済まな
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