、内容が替つて居るのに拘らず、変化の尠い地方もある。年代の交錯して居るのは、一つは私の叙述法の拙劣なのにもよるが、方法自身、本質自体に、さう言ふ処があるからでもある。
此本をまづ整頓した形にしてくれたのは、私の国学院での最若い「臨時代理講師」時代から、私の講義を聴き続けて来てくれた、今の国学院大学教授今泉忠義さんである。この場合に言ふも変だが、私の民俗学に対する熱情は、此人及び谷川磐雄さん・高崎正秀さんの学生時代の清らかな心によつて煽られた事が多いことを述べて置く。次には、横山重さん・波多郁太郎さんの、恥しい私の書き物に対する、愛の充ちた編纂整理の上の御苦労を感謝して置かねばならぬ。殊に郁太郎さんには、此乱雑な文章集の為の、索引を作つて貰うたことをくり返して置きたい。
三冊を通じて、口だての筆記文が、大分交つてゐる。これでは随分、友人北野博美さんのおせは[#「おせは」に傍点]になつてゐる。其雑誌の為に、私の講義・座談を書きつゞめて、めんどうな私の発想法に即きつ離れつして、大抵の人に訣る程度にして下された友情を、あり難く思ふ。かうでもして頂かぬと、発表し渋る私なのである。国学院雑誌記者時
前へ 次へ
全38ページ中31ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング