古代研究 追ひ書き
折口信夫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)境《ミ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|本《もと》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)てあひ[#「てあひ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)かん/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
この書物、第一巻の校正が、やがてあがる今になつて、ぽっくりと、大阪の長兄が、亡くなつて行つた。さうして今晩は、その通夜である。私は、かん/\とあかるい、而もしめやかな座敷をはづして、ひっそりと、此後づけの文を綴つてゐるのである。夜行汽車の疲れをやすめさせようと言ふ、肝いり衆の心切を無にせまい為、この二階へあがつて来たのであつた。
かうして、死んで了うた後になつて考へると、兄の生涯は、あんまりあぢきなかつた。ある点から見れば、その一半は、私ども五人の兄弟たちの為に、空費して了うた形さへある。
昔から、私の為事には、理会のある方ではなかつた。次兄の助言がなかつたら、意志の弱い私は、やっぱり、家職の医学に
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