、言語伝承のみに保存せられ、其が後代の規範として、実生活に入りこんだから、古代における俗間語原観を考へる語原研究が、民俗の考察に棄てられない方法である事がやつと訣つて来てゐるのである。
だが、同系語の中、殊に縁の深い言語と謂うても、容易に、古代語の研究に応用することは、やはり危い迷ひ路である。うごなあり[#「うごなあり」に傍線]と言ふ語が、沖縄の近世に生きて用ゐられ、今も先島に残つて居るにしても、「集侍《ウゴナハ》る」と言ふ祝詞の用語とおなじものだと信じてはならぬ。その残り方に、不自然さをまづ感じなければならぬ。おもろ[#「おもろ」に傍線]発想法変改の為の軌範として、祝詞が採用せられた事も考へられないではない。さうした女官としての貴い巫女の間には、万葉・古今・源氏の語も、近代日本語も、一つに用ゐられた形跡がある。さう言ふ人々の唱へる呪詞には、祝詞の用語が移された事もあらう。国々の呪詞の民謡化する事の早い島では、さうした日本の古語を、民謡の上に話して用ゐた例もある様だ。「混効験集」に蒐めた内裏語やおもろ[#「おもろ」に傍線]用語には、さうした過程を経たものも多いと思はねばならぬ。其が、国
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