に傍線]・はなに[#「はなに」に傍線]などが用ゐられた。而も、神物のしるし[#「しるし」に傍点]とも見る処から、神聖な禁制の義を表して、はなづま[#「はなづま」に傍線]の手触れ難きを表す用語例をも生じてゐる。かうして見ると、木草の花から説き出して、はな[#「はな」に傍線]一類の語原を解説する旧説は、考へ直さねばならぬ。はな[#「はな」に傍線]の語原は、まだ解する事が出来ない。だが、尚溯ると、聖役に仕へる者の頭につけた服従のしるし[#「しるし」に傍点]であつた事もある。土地の精霊の神に誓ふ形式と考へられたものが、神人・巫女の物忌みの標となつたのである。さうすると、兆象以前に、御貢《ミツギ》・魂|献《マツ》りの義があつたらしくも見える。
私の学問は、最初、言語に対する深い愛情から起つたものであるから、自然言語の分解を以て、民俗を律しようとする傾きが見えぬでもない。一時は、大変危い処に臨んで居た。併し、語原探究と、民俗の発生・展開との、正しい関係を知る様になつた。だから、言語の分解を以て、民俗の考察の比較の準備に用ゐ、言語の展開の順序を、民俗も履んで居るかを見る様になつて来た。唯、古代生活は
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