―物まね狂言――や、村|群行《ワタリ》や、家ぼめのことほぎ[#「ことほぎ」に傍線]が行はれて居る。呪師系統の田楽は、約束どほりの服装に、編木《ビンザヽラ》を持ち、田楽鼓を腰にし、一様に藺笠を頂くのを目標とする事が出来るが、巫女田楽では、既に違ふ。村田楽や法師田楽などの形は、古い絵を見ても、違うてゐる様だ。竹の簓を摩り、大太鼓を吊り下げ、唯の晴れ着らしい物を着て、笠を冠るのも、鉢巻きをするのもある。法師田楽になると、大太鼓の代りの鉦鼓を、重さの為に高く吊り、おなじ田の行事なる鎮花祭の悪霊逐ひの念仏踊りと、田の祝福の田楽とを混淆して、踊るのも其はずである。
呪師系統の田楽で、大切な芸になつてゐる手品・軽業の類は、正式の田楽風を存する処にも、後には、行はれなくなつて居る。曲芸を忘れた芸能は、田楽としての要素を、既に、落してゐるのである。編木も簓も知らず、幸若の様な扮装をして出る遠州旧奥山村の田楽には、尚曲芸の形式だけは行ひ、又、他処には忘れられた田楽能――能楽要素を多くとりこんだ――を演じて居る。呪師田楽の地方的本拠なる伯州大山寺に近い、出雲西南の社々には、田楽の変体らしい傘鉾行列の群舞を行
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