たに係らず、固有の発想法で、自在に分解叙述してゐる。物皆は時代を追うて発達する。唯語ばかりが、此例に洩れて、退化してゐる例は決して少くないのである。単綴・孤立の漢語は、無限に熟語を作ることは出来ても、国民の感情に有機的な吻合を為すことは出来なかつた。散文はともあれ、思想の曲折を尊ぶ律文に、固定的な漢語が、勢力を占めることの出来なかつたのは、この為である。其にも係らず、世間通用の語には、どし/\漢字の勢力が拡つて来てゐる。
さすれば、短歌に用ゐられる語は、当然|愈《いよいよ》減じて来る訣である。其で、此欠陥を埋めるには、どういふ方便に従へばよいか。之を補填するものとして、漢語・口語・新造語・古語を更に多く採り入れるといふことが、胸に浮ぶ。処が漢字・漢語は、熟語を除いては、既に述べたやうな根本の性質上、まづ今の分では、大した結果を予期することは出来ぬ。
口語は極めて有望なものであるが、此迄色々の人に試みられたやうな、無機的なものでなく、単語としてゞなく歌全体が、口語の発想法によつて、律動するやうなものでなくては、多くの場合無意義な努力になつて了ふのである。新造語も亦其通りで、二つの漢字を並
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