古語復活論
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)偶《たまたま》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)当然|愈《いよいよ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はやり語[#「はやり語」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)まだ/\
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記紀の死語・万葉の古語を復活させて、其に新なる生命を託しようとする、我々の努力を目して、骨董趣味・憬古癖とよりほかに考へることの出来ない人が、まだ/\随分とあるやうである。最近には、御歌所派の頭目井上通泰氏が、われ/\一派に向うて、暗に攻撃的の態度を示してゐる。これは偶《たまたま》、安易な表現・不透明な観照・散文的な生活に満足してゐる、桂園派の欠陥を曝《サラ》け出してゐるので、歴史的に存在の価値を失うてゐる人々の、無理会な放言に対して、今更らしく弁難の労をとらうとは思はぬ。唯尠くとも、新芸術を解してゐると思はれる人々の、懐いてゐる惑ひを、開いて置かうと思ふのだ。
軽はづみで、おろそかであることを意味する常識一片の考へから見れば、
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