ども、それから後の国学者の解釈法には、翁以上に出たものはないと思ふ。
貫之の
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糸によるものならなくにわかれ路の心ぼそくもおもほゆるかな
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を解いては、別れ路のこゝろといふものは、糸による片糸のやうなものぢやないけれど、心細いものであるわい、といふやうなやりくちである。徒然草を見ても、この歌が、昔古今集の歌屑といはれて居つたことが見えて居るが、これは、一つは鑑賞法が進まなんだにもよるけれど、解釈法の不完全であつたのにも一つの原因がある。
逐字訳といふもの、これも和歌には効果がない。遠鏡は、出来るだけ逐字訳をして、簡単な形につゞめようとしたものであるが、和歌の性質上、逐字訳は許されぬのであるから(このことは「和歌批判の範疇」を参考せられたい)、寧ろ強ひて内容をつゞめるよりも、読者がその歌について知るべき内容の中心を摘出するに止めておくがよろしからう。さうであるから、時には、勢ひ原形式の数十倍以上の語をも費さなければならないこともあらう。自分は、これから、難解と思はるゝ歌の解釈をやつて見るが、その解釈法は、これまでのやり口と、多少変つた方法を以
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