い[#「うたてい」に傍線]と形容詞に扱はれて、大抵は嫌悪倦怠感を起させる対象に向つての表情となつてゐる。近代の用語例は、やはり其と同じで、形はうたてし[#「うたてし」に傍線]を思はせるうたてい[#「うたてい」に傍線]の外に、うたての[#「うたての」に傍線]・うたてな[#「うたてな」に傍線]などがある。中世の初め――平安期の日記・物語・短歌類にあるものは、うたてあり[#「うたてあり」に傍線]が標準形で、うたてし[#「うたてし」に傍線]と言ふ形は、卑俗な感じを持たせたものらしい。ところが極めて微力な用語例だが、うたゝあり[#「うたゝあり」に傍線]と言ふ形が、稀に用ゐられてゐる。此が、うたて[#「うたて」に傍線]・うたゝ[#「うたゝ」に傍線]並行時代で、とりたてゝ用語例に区別がないやうだ。「花と見て折らむとすれば、女郎花うたゝあるさまの名にこそありけれ(古今)」「思ふことなけれど濡れぬ我が袖はうたゝある野べの萩の露かな(後拾遺)」「さらぬだに雪の光りはあるものをうたゝあり[#「うたゝあり」に傍線]あけの月ぞやすらふ(式子内親王集)」古今以後の短歌に、うたゝあり[#「うたゝあり」に傍線]が標準
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