うに分割して説明する場合が、尠くないのである。たとへば、イヨヽヽ・マスヽヽを、ウタヽと言ふ日本語で、其を訳し分けて訓をつけると、全く別の用語例にあるものと見える。だが実は、ウタヽとイヨヽヽとの間には、其ほどの区別はないのである。倍の字が、イヨヽヽの意義を持つてゐることは言ふまでもない。而も同時にウタヽと訓むだけの内容を持つてゐる事も知れる。即、ウタヽとイヨヽヽとがある時期には、一つの意義をめぐる隣接語だつたのである。
其は殆同じ内容の新旧並行の同義語だつたり、又階段を異にしてゐると言ふだけの近義語の場合もあり、其から又、飛び離れた意義の語でありながら、ある一つの語に対して、同じ位置に据ゑられることがある。とすると、本来の意義の中から、似よりの方面を分化して、右の語に関係して行く。「うたゝ」と「いよ/\」とは、同義語でないかも知れぬ――さう見る方が適切らしいが、仮りにかう言ふ風に考へて――が、ある時期において、ある種の叙述的な語句に接する時には、非常に近義を発揮したのだと言へる。うたて[#「うたて」に傍線]の方から言へば、いよ/\と殆同じ用語例に入ることになる。
併し此語の用語例は、積極
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