い。マヱフ(?)と見えるのは、目酔ふと解したものか、眩く(めくるめく)のまよふ[#「まよふ」に傍点]であらう。ウクツタ(ク?)と思はれる註がウタカタの誤写ならば、此からの話とも関聯があるのだ。が、恐らく此は、驟を訓むウタツクと同義があるからとも思はれる。此外に、イヨヽヽ・ウタヽが出てゐる。此序に近い行を見ると、輒輒にもタチマチ・スナハチ・ホシイマヽなどある中に、こゝにもウタヽと言ふ註が交つてゐる。どう考へても、さう言ふ訓の出る理由がない。恐らく写字の錯誤ではなからうか。
色葉字類抄には、転にウタヽ[#「ウタヽ」に「イヨヽヽ」の注記]と訓じた次に、云重詞也とあつて、後は解し難い数字がある。其次に、倍同[#「同」は小書き]とある。さすれば、此もイヨヽヽ・ウタヽと訓じてよい訣だ。転・倍共にイヨヽヽと註するのは、当然である。仮りにずつと降つて、嘉慶の平他字類抄を見る。其にも、転[#ここから割り注]ウタヽテン[#ここで割り注終わり]、とある。
漢字典の記載法を思ふと、解説者の、用語例に関する限界が、時には近過ぎたり、遠ざかり過ぎてゐることが多い。同じ用語例にあるものを、わざ/\意義の別なものゝや
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