※[#「やまいだれ+惡」、第3水準1−88−58]《オホベシミ》の面に現れてゐるのだ。一体日本には、古くから面のあつたことを示す証拠はある。併し、外来の面が急速に発達した為、在来の面は、其影を潜めたのである。
開口は、口を無理に開かせて返事をさせる事で、其を司る者は脇役である。して[#「して」に傍線]は神で、わき[#「わき」に傍線]は其相手に当る。かうしたわき[#「わき」に傍線]の為事が分化して来ると、狂言になるのだ。勿論、狂言は、能楽以前からあつたものである。大※[#「やまいだれ+惡」、第3水準1−88−58]《オホベシミ》の面は、全く口を閉ぢてゐる貌であるが、此面には、尊い神の命令を聴くと言ふ外に、其命令を伝達すると言ふ、二つの意味がある。即、神であり、おに[#「おに」に傍線]であるのだ。
また一方、恐怖の方面のみを考へたのが、鬼となつた。鬼と言ふ語は、仏教の羅卒と混同して、牛頭《ゴヅ》・馬頭《メヅ》の様に想像せられてしまうた。其以前の鬼は、常世神の変態であるのだが、次弟に変化して、初春の鬼は、全く羅卒の如きものと考へられたのである。つまり、初めは神が出て来て、鬼を屈服させて行くの
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