]とは、ちようど反対の立場にある。
猿楽ではをかし[#「をかし」に傍線]といひ、延年舞ではもどき[#「もどき」に傍線]と称して、所謂もどき開口[#「もどき開口」に傍線]の儀式をする者がある。もどき[#「もどき」に傍線]が、殊に有力な働きをするのは田楽で、随つて寺院の舞踊に這入つてゐる。ひよつとこ[#「ひよつとこ」に傍線]は、その最近くまで残つた形である。もどき[#「もどき」に傍線]は即「もどく」意で、反対する事を現す。日本の芸術では、歌の掛け合ひから既にもどき[#「もどき」に傍線]である。神と精霊との問答が、歌垣となつたのである。源に溯ると、あらゆる方面にもどき[#「もどき」に傍線]が現れてゐる。
能楽の面に大※[#「やまいだれ+惡」、第3水準1−88−58]《オホベシミ》と言ふのがあるが、※[#「やまいだれ+惡」、第3水準1−88−58]《ベシミ》は「へしむ」といふ動詞から出た名詞で、口を拗り曲げてゐる様である。神が土地の精霊と問答する時、精霊は容易に口を開かない。尤、物を言はない時代を越すと、口を開くやうにもなつたが、返事をせないか、或は反対ばかりするかであつて、此二つの方面が、大
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