《サイ》の男《ヲ》である。伴神が二つに分れて、既に服従したものと、尚、服従の途中にあるものとに分れた。才の男に、からかひ[#「からかひ」に傍点]かける態のあるのは、あまのじやく[#「あまのじやく」に傍線]と称する伝説上の怪物・里神楽のひよつとこ[#「ひよつとこ」に傍線]などゝ同じやうに、尚服従の途中にある事を示して居るのである。巨人《オホビト》の方は、既に服従したものである。だから行列に於いて、前立となるのである。

     三 才の男・細男・青農

才の男は、せいのう[#「せいのう」に傍線]とも発音したらしい。青農と書いたものがある。又、細男と書いて、せいのう[#「せいのう」に傍線]と訓ませても居る。共に、此場合は、多く人形《ニンギヤウ》の事の様であるが、才の男の方は、人である事もあつた。平安朝の文献に、宮廷の御神楽《ミカグラ》に、人長《ニンヂヤウ》の舞ひの後、酒一巡して、才の男の態がある、と次第書きがある。此は一種の猿楽で、滑稽な物まねであつたと思はれる。「態」とあるによつて、わざ[#「わざ」に傍線]・しぐさ[#「しぐさ」に傍線]を、身ぶりで演じた事が示されて居る。
この「態」の
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