時としては、馬頭だけを離しても、又女体の方だけを離しても、おひら[#「おひら」に傍線]様と考へる事が出来たのである。図――博物館所蔵のもの――のおひら[#「おひら」に傍線]様の如きは、蚕神である馬頭がなくなつて、殆普通の立ちびな[#「びな」に傍線]の形に近づいて居る。これと、図の三河びな[#「びな」に傍線]・薩摩びな[#「びな」に傍線]をくらべて見ると、形に於ては、非常に変化がある様だが、後者は、けづりかけ[#「けづりかけ」に傍線]に紙或はきれ[#「きれ」に傍線]を以て掩うたものである事が、明らかであると同時に、前者との間にも、形式上通じた所のあるのが見える。此から考へると、此等のものは毎年、年中行事として、一度棄てたものに相違ない。さうして其が、毎年捨てられる代りに、新らしい布帛を掩ふ事によつて、元に戻つた事を示す形のおひら[#「おひら」に傍線]様が、出来たのではあるまいか。かうして、棄てられるおひら[#「おひら」に傍線]様以外に、神明巫女の手によつて、常に保存せられる強力なおひら[#「おひら」に傍線]様が、専らおひら[#「おひら」に傍線]様として信ぜられる様になつたと考へて見る事が
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