の様に見えるが、後世の様に、蚕の守り神と言ふ風に固定しない以前には、確かにさうした時期があつたのであらうと思ふ。
併し此は、又、逆に考へて見る事も出来なくはない。おひら[#「おひら」に傍線]様は、東国に根生《ネバ》えの種を持つて居たのではないかと言ふ事である。其には、宮廷の「大宮《オホミヤ》の※[#「口+羊」、第3水準1−15−1]祭《メマツ》り」が想像に上る。此は疑ひもなく、東国風をうつしたもので、思ふに常陸の笠間の社と関係が深いものらしい。
此祭りの中心になるのは、一つの華蓋《キヌガサ》である。此に様々な物を下げるが、其中心になるものは、男女の姿をした人形《ヒトガタ》であつた。華蓋《キヌガサ》は、祭りのすんだ後には、水に流されるものと思はれるが、此|人形《ヒトガタ》とおひら[#「おひら」に傍線]様、延いてはひな[#「ひな」に傍線]との間に、或関係がないであらうか。併し此とても、単に東国風とは限らず、どこでも、男女二体の人形《ヒトガタ》を作る習慣があつたので、只僅かに、大宮の※[#「口+羊」、第3水準1−15−1]祭りに著しく印象が残つて居た、と言ふに止まるのであるかも知れない。ひな
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