#「ちぎびつ」に傍線]と、雛の正体との関係で、其はよほど、密接だつたらうと言ふ事である。私をして言はしめれば、ひな[#「ひな」に傍線]は、ちぎびつ[#「ちぎびつ」に傍線]からは離す事の出来なかつたものである。雛祭りには、此が出なければならなかつたのである。元来は、ちぎびつ[#「ちぎびつ」に傍線]の中にひな[#「ひな」に傍線]が入れられて居たのだ、と考へてよい。其には、段々証拠がある。譬へば、くゞつ[#「くゞつ」に傍線]の道具を見ても訣る。
或器物の中に、神霊が入れられてあつて、呪術の必要から、其がとり出される。かう言ふ事は、何事にも類例はあると思ふ。此霊物は、出さないで神力あるものと、取り出して、神秘な動作をする事によつて、其が現れるものと、二様に見られる訣だが、或旅行用具、或は其が変つて来た神聖な箱の中に、神霊を入れた例は、幾つかある。此の更に進化したものが、傀儡子の胸にかけた箱である。要するに、海の神人の持つたくゞつ[#「くゞつ」に傍線]・山の神人の持つたほかゐ[#「ほかゐ」に傍線]なども、同じ性質のものと見られる。
沖縄本島首里の石嶺に、行者《アンニヤ》村と言ふ部落があつて、其所
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