の東歌や防人歌などを見ると、はやし[#「はやし」に傍線]と言ふ語が沢山に出て来る事である。
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麁玉《アラタマ》の伎倍《キベ》のはやし[#「はやし」に傍線]に名を立てゝ、行き敢《カ》つましゞ。寝《イ》を先立《サキダ》たに
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此歌は難解の歌である。「麁玉《アラタマ》の伎倍《キベ》のはやし[#「はやし」に傍線]」と言ふのは、麁玉《アラタマ》郡の伎倍《キベ》のはやし[#「はやし」に傍線](林)と言ふのかも訣らぬ。併し、私は、麁玉郡に伎倍《キベ》があるのではなく、遠江に同名の地があるから、此を聯想したものであらうと思ふ。村境に建てる柵が「き」である。そこへ、旅に行く人と別れる時、切りはなした木を樹てゝ、其魂を留めて置く。柵辺《キベ》にはやし[#「はやし」に傍線]た木を樹てるのである。此木を樹てると、魂が留まると信じて居たのであらう。其が「伎倍《キベ》のはやし[#「はやし」に傍線]」であると思ふ。「寝《イ》を先だゝに」は、そんな所ではやし[#「はやし」に傍線]の行事をして居ないで、早く村へ入つて了へ。お前を立たせて置いては、私が先へ行きかねまい、と言ふ
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