のである。
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上《カミ》つ毛野《ケヌ》 佐野《サヌ》のくゝたち[#「くゝたち」に傍線]折りはやし[#「はやし」に傍線]、吾《ワレ》は待《マ》たむゑ。今年|来《コ》ずとも
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くゝたち[#「くゝたち」に傍線](植物の名か)を折りはなして来て、何のたよりがなくとも、私は待つて居りませうと言ふのである。此はやす[#「はやす」に傍線]といふ所に、一種の霊魂を移す信仰があつたのである。
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松《マツ》の木《ケ》のなみたる見れば、家人《イハビト》の 我《ワレ》を見送ると、立たりしもころ
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なむ[#「なむ」に傍線](なみ)は撓《シナ》えて居る事、なびく[#「なびく」に傍線]と同じで、ぐにやり[#「ぐにやり」に傍点]として居る事である。「もころ」は占ひの詞である。卦と言葉とぴつたり合ふ正占の事で、二つのものがぴつたり合ふ事がもころ[#「もころ」に傍線]である。もころ[#「もころ」に傍線]は、元は、占ひの語に相違ない。
我を見送る[#「我を見送る」に傍線]と言ふ事も、今の見送るではない。後に残つて居て、私を護つて居る
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