方は、主に桙で、先触れの方は、花である。木に就て、此両面が分れて居る。

     六

ふゆ[#「ふゆ」に傍線]は触《フ》れることである。ふゆ[#「ふゆ」に傍線]とふる[#「ふる」に傍線]とは同じ事である。ふゆ[#「ふゆ」に傍線]は物を附加する事であるが、もとは物を分割する意味である。ふる[#「ふる」に傍線]はまな[#「まな」に傍線](外来魂)を人体に附加する事で、冬になると総てのものをきり替へるので、魂にも、外から来る勢力ある魂を附加するのである。発音がふる[#「ふる」に傍線]ともふゆ[#「ふゆ」に傍線]とも言ふ為に、附加する事を意味して居る。それが次第に変化して、魂の信仰も変つて来、自分の体の魂を分割して与へる様になる。即、魂に枝が出来る。勝手に分岐するのである。ふゆ[#「ふゆ」に傍線]は、分岐するから、増殖すると言ふ意味が出て来る。
魂を附加するのは、鎮魂祭である。此を魂《タマ》ふり[#「ふり」に傍線]と言ひ、その儀式が厳冬に行はれる。魂ふり[#「魂ふり」に傍線]はまな[#「まな」に傍線]を内部に附加して了ふ事であるが、支那の鎮魂は内の魂を出さない様にする事である。此が変化して
前へ 次へ
全38ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング