つば[#「つば」に傍線]の語根であり、唾[#「唾」に傍点]はつばき[#「つばき」に傍線]である。椿がうら[#「うら」に傍線]を示すもの故、唾にも占ひの意味があるのだらうと考へたのである。どの時代に結合したか訣らぬが、時代は古いもので、つ[#「つ」に傍点]に占ひの意味が含まれてゐる。だから、椿と言ふ字が出来て来る。春に使われる木だから椿の宛て字が出来た。
私は、椿の古い信仰は、熊野の宗教に伴うて残つたものではないかと思ふ。熊野の男の布教者は、梛《ナギ》をもつて歩き、女の布教者は、椿をもつて歩いたのではあるまいか。此は、私の仮説である。とにかく、山人が椿の桙を持つて来たから、海石榴市である。
榎も、今言ふ様なものではない。え[#「え」に傍点]の音の木は沢山ある。朴の木、橿《カシ》の木の一種にもおなじ名がある。此は「斎《ユ》」と関係があるらしい。柳《ヤナギ》は斎《ユ》の木《キ》である。矢《ヤ》の木ではなくて、斎《ユ》の木、即、物忌みの木である。ゆのぎ[#「ゆのぎ」に傍線]がやなぎ[#「やなぎ」に傍線]になつて来たのである。万葉集・古今集などに青やぎ[#「青やぎ」に傍線]とあるが、やぎ[#「や
前へ
次へ
全38ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング