》をする。此袴着・裳着は、幼時に一度行ふばかりでなく、大きくなつてから今一度行ふ。貴族の男児は、成年戒には黒※[#「巾+責」、第3水準1−84−11]をつける。其形は日本在来の鬘の形で、後方で結んで居て、植物の蔓を頭へ巻いたと同じ形である。物忌みの間につける蔓の形が、支那の※[#「巾+責」、第3水準1−84−11]の形と合して、黒※[#「巾+責」、第3水準1−84−11]となつたのだ。
此に対して女は「はねかづら」を着ける。万葉集には「はねかづら」と言ふ語が四个所に出て来る。
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はね蔓今する妹を夢に見て、心の中《ウチ》に恋ひわたるかも(家持――巻四)
はね蔓今する妹はなかりしを。如何なる妹ぞ、許多《コヽダ》恋ひたる(童女報歌)
はね蔓今する妹をうら若み、いざ、率《イザ》川の音のさやけさ(巻七)
はね蔓今する妹がうら若み、笑《ヱ》みゝ、怒《イカ》りみ、つけし紐解く(巻十一)
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即「はね蔓《カヅラ》今する妹」といふ様な形になつてゐる。此はねかづら[#「はねかづら」に傍線]は花かづら[#「花かづら」に傍線]の事であらう、と言ふ説がある。其はとにか
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