ケイマゲウツチヨ》け」と叫んだ。其跡が「げいまぎ崎」と言はれてゐる。又三千の人形に、千体は海へ、千体は川へ、千体は山へ行け、と言うて放した。此が皆、があたろ[#「があたろ」に傍点]になつた。だから、海・川・山に行き亘つて、馬の足形ほどの水があれば、其処にがあたろ[#「があたろ」に傍点]が居る。若し人の方の力が強ければ、相撲とりながら、其手を引き抜く事も出来る。藁人形の変化だからと言ふのである。
両手が一時に抜けたとは言はぬが、あいぬ[#「あいぬ」に傍線]のみんつち[#「みんつち」に傍点]に似過ぎる程似てゐる。夏祓へに、人間の邪悪を負はせて流した人形《ヒトガタ》が、水界に生《シヤウ》を受けて居るとの考へである。中にも、田の祓へには、草人形を送つて、海・川へ流す。夏の祓へ祭りと、河童と草人形との間に、通じるものゝあるのは、尤である。而も、河童に関係浅からぬ相撲に、骨を脱《ハヅ》して負ける者の多い処から、愈河童と草人形との聯想が深まつて来た、と思はれる。
[#嘴と翼をもつ河童の図(fig18395_08.png)入る]
古代の相撲は、腕を挫き、肋骨[#「肋骨」は底本では「助骨」]や腰骨を蹶折
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