河童の話
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)尾《ツ》けて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)長者|原《バル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「牛+子」、287−5]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)どん/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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[#ここから3字下げ]
私はふた夏、壱岐の国へ渡つた。さうして此島が、凡北九州一円の河童伝説の吹きだまりになつてゐた事を知つた。尚考へて見ると、仄かながら水の神信仰の古い姿が、生きてこの島びとの上にはたらいて居るのを覚つた。其と今一つ、私はなるべく、認識不十分な他人の記録の奇事異聞を利用する前に、当時の実感を印象する自分の採訪帳を資料とする事が、民俗の学問の上に最大切な態度であると思ふ故に、壱岐及びその近島の伝承を中心として、この研究の概要を書く、一つの試みをもくろんだのである。
この話は、河童が、海の彼岸から来る尊い水の神
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